
2026.09.30
ChatGPTに祝詞を書かせた妻。けれど、AIには絶対に書けなかった一行がある。―シリーズ「お墓は、命のバトン」

あなたは、自分の名前が彫られる石を、見たことがありますか。
いつか、あなたが入る場所です。
その石の前に、誰も来なかったら。
花もない。
線香の灰もない。
ただ、草だけが伸びていく。
あなたの名前は、石につけられた傷になる。
そんな未来を、想像したことがありますか。
新聞に「亡夫の一年祭 祝詞を自作」という投書が掲載されていました。
夫が亡くなって、一年。
八月。
猛暑です。
彼女は、夫の一年祭を、夫が喜びそうな形で営みたかった。
高齢の兄や姉は、来られない。
山の上の墓前に立ったのは、彼女と、三人の娘、その家族だけでした。
彼女の手には、一枚の紙。
自分で書いた祝詞です。
使ったのは、ChatGPTと古語辞典。
「ChatGPTが書いた祝詞」
そう聞いて、あなたは何を思いますか。
手抜き。
便利な時代。
あるいは、冒涜。
どれでもいい。
でも――たぶん、そこじゃないのです。
ChatGPTは、言葉を出せます。
けれど、夫が何を好んだのか。
どんな人だったのか。
どんな声で笑ったのか。
それを、ChatGPTは知りません。
知っていたのは、彼女です。
そして、その記憶を、祝詞の中に入れたのも、彼女でした。
夫が神官だったのは、二年間。
けれど彼女は、祭礼のたびに義父を手伝ってきました。
夫の手伝いも。
だから、墓前で祝詞を読むとき。
彼女の耳の奥では、義父の声が鳴っていた。
夫の声が鳴っていた。
朗々と山に響いていた、あの声が。
そのときです。
石碑に、一匹のトンボが止まりました。
祝詞が終わるまで、じっと。
終わると、あたりを飛び始めました。
彼女には、「よう頑張ったなあ」と夫の声が聞こえたように、思えたそうです。
娘たちは言いました。
「お母さん、上出来」
ここで、一度立ち止まりたいと思います。
本当の力は、ChatGPTにはありません。
古語辞典にもありません。
借りられないものが、彼女の中にあった。
夫と過ごした時間です。
隣に立った時間です。
声を聞いた時間です。
笑った時間です。
その人を、その人として覚えている時間です。
AIは、言葉を借りることができる。
でも、生きた時間までは借りられない。
想像してみてください。
あなたの一年祭の日。
誰かが、あなたのために祝詞を書こうとしています。
ChatGPTを開く。
入力欄で、カーソルが点滅している。
「故人の趣味は?」
打ち込める人は、いますか。
「故人の人となりは?」
打ち込める人は、いますか。
「故人との思い出は?」
そこまで書ける人は、いますか。
もし、誰も書けなかったら。
画面には、きれいな言葉が並びます。
正しい言葉。
美しい言葉。
誰にでも当てはまる言葉。
そして最後に、あなたの名前だけが差し替えられる。
それは、あなたの人生でしょうか。
それとも――テンプレートでしょうか。
隣に立たなかった人は、死んだあと、テンプレートになる。
少し厳しい言葉です。
でも、考えてみてほしいと思います。
あの日、山の墓石の前には、三つの時間が立っていました。
義父と夫の声。
その声を受け取って読む、彼女。
そして、その背中を見つめる、娘たちと、その家族。
過去が、現在の喉を通る。
そして、未来の目に映る。
命は、こうやって受け継がれていく。
お墓とは、死んだ人をしまっておく場所ではありません。
覚えている人と、これから覚える人が、同じ石の前に立つ場所です。
石は、何も覚えていません。
覚えているのは、人です。
だから私たちは、石を彫りながら、ずっと同じことを考えてきました。
この石の前に、誰が立つのか。
射場石利石材は、1702年から三百年以上。
その「誰かが立つ場所」を、つくってきました。
石を売るだけではありません。
家族の物語が、次の世代に渡っていく場所をつくる。
人が、孤独にならない構造。
それを守ってきたのだと思っています。
もし、あなたが死んだとき。
誰も石の前に立たなかったら。
あなたの声を覚えている人が、ひとりもいなかったら。
少し怖い話です。
でも、まだ間に合う。
隣に立てるのは、生きているあいだだけだから。
だから今夜。
隣にいる人の名前を、用もないのに呼んでみてください。
「おい」
ではなく。
ちゃんと、名前を。
その声が、いつか誰かの記憶になる。
いつか石の前で、思い出される声になる。
命は、誰かの身体にだけ残るのではありません。
その人と生きた人の中に、その人の生き方として残っていきます。
そして、その記憶を受け取った人が、また次の誰かへ渡していく。
それが、命のバトンなのだと思います。
今日、あなたの声は、誰の記憶に残るでしょうか。
お墓。
それは、今日を笑顔にするもの。
明日を、少し元気にしてくれるもの。
十月の澄んだ空の下。
隣にいる人の名前を、ふと呼べますように。
※本稿は、新聞に掲載された投書を題材に、筆者の視点で再構成したものです。筆者自身の体験ではありません。

石の個性と、家族の物語をつなぐ。
命のバトンを、未来へつなぐ伴走者。
射場石利石材株式会社
六代目当主 射場一之
【基本情報】
所在地:大阪府茨木市新和町16番19号
電話番号:0120-148-183
営業時間:8:00~18:00
定休日:年末年始のみ
メール:[info@iba.co.jp](mailto:info@iba.co.jp)
LINE:https://line.me/R/ti/p/@582fiyxj
【資格】
◇ 大阪府知事許可(般-4)第87663号
◇ 労働大臣認定 1級技能士石加 第84号
◇ 経済産業省公認 石匠位認定 第89001号
◇ お墓ディレクター1級 05-100101-04
◇ 建築石材アドバイザー 222034
◇ 相続診断士 20333425
◇ 終活ガイド 00005872
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