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2026.08.30

その靴は、汚れない。地震のあとに届いた「26.5cm」のスニーカー。――シリーズ「お墓は、命のバトン」

※この物語は、新聞に掲載された記事をもとに、筆者の視点で再構成したものであり、実体験ではありません。

 


 

靴が、届きました。

 

真新しい、白いスニーカー。

 

26.5センチ。

 

でも。

 

履く人は、もういません。

 

熊本県八代市。

 

大きな揺れが去って、数日後の夕方。

 

インターホンが鳴りました。

 

宅配ドライバーが差し出した荷物。

 

宛先は、隣に住んでいた叔父でした。

 

けれど。

 

その方は、地震で亡くなっていました。

 

震える手で、段ボールを開ける。

 

そこには、アディダスの箱。

 

蓋を開ける。

 

中から出てきたのは、真っ白なスニーカーでした。

 

亡くなる前に、注文していたものだったのです。

 

その方は、靴が好きでした。

 

お気に入りの靴を履くときには、靴下まで履き替える。

 

それほど、大切に靴を履く人だった。

 

だから、思ってしまいます。

 

地震さえなければ。

 

今ごろ、この靴を履いて、

 

どこかへ出かけていたのだろう。

 

笑いながら、「これ、いいでしょう」と誰かに見せていたのかもしれない。

 

でも。

 

その未来は、突然、なくなりました。

 

残ったのは、一足の白い靴。

 

そして、その人が確かに生きていたという事実でした。

 


 

ここで、ふと思います。

 

お墓とは、何なのでしょうか。

 

亡くなった人を、「しまっておく場所」でしょうか。

 

私は、そうではないと思っています。

 

お墓は、過去を保存する場所ではありません。

 

過去と、今と、未来をつなぐ場所です。

 

先祖。

 

自分。

 

子ども。

 

孫。

 

まだ見ぬ未来の誰か。

 

そこを一本の線でつなぐ。

 

それが、お墓なのだと思います。

 


 

一足の靴も、同じです。

 

履く人がいなくなった瞬間、靴は、ただの「モノ」ではなくなりました。

 

そこには、その人の好みがあり、暮らしがあり、これから歩くはずだった道があり、そして、

その人の人生そのものが、静かに宿っている。

 

だから、その靴を見るたびに、残された人は思うのでしょう。

 

「あの人は、確かにここにいた」と。

 

人は、身体がなくなった瞬間に、すべてが消えるわけではありません。

 

口ぐせが残る。

 

考え方が残る。

 

生き方が残る。

 

誰かへの優しさが残る。

 

家族への愛情が残る。

 

そして、それを受け取った人が、また次の誰かへ渡していく。

 

命は、誰かの身体ではなく、生き方の中で受け継がれていく。

 

これが、私が考える「命のバトン」です。

 


 

だから、お墓も同じです。

 

お墓は、過去を振り返るだけの場所ではありません。

 

未来へ向かって、自分の生き方を確かめる場所です。

 

「あの人なら、どうするだろう」

 

そう考える。

 

「自分も、こう生きよう」

 

と決める。

 

そして、その覚悟を持って、今日の暮らしへ帰っていく。

 

だから私は、お墓参りを、「過去に会いに行くこと」だけだとは思っていません。

 

未来の自分に会いに行くことでもある、そう思っています。

 


 

「あのとき、もっと会っておけばよかった」

 

「あのとき、もっと話しておけばよかった」

 

人を失ったあとに生まれる後悔は、簡単には消えません。

 

でも。

 

その後悔を、ただの後悔で終わらせなくてもいい。

 

「あの人を大切にしたかった」

 

その気持ちを、「今日、目の前の人を大切にしよう」

 

に変える。

 

それが、命を受け継ぐということなのかもしれません。

 

後悔は、覚悟に変えられる。

 

悲しみは、生き方に変えられる。

 

そして、受け取った命は、次の誰かへ渡すことができる。

 


 

真っ白なスニーカーは、けして汚れることがありません。

 

履かれることもありません。

 

けれど。

 

その靴を見るたびに、誰かの心の中で、その人はもう一度、歩きはじめるのかもしれません。

 

一緒に歩いた道。

 

交わした言葉。

 

笑った時間。

 

大切にしていたもの。

 

その人らしい、生き方。

 

それらは、まだ終わっていません。

 

誰かの中で、今日も続いている。

 


 

お墓は、後悔を置いていく場所ではありません。

 

覚悟を持ち帰る場所です。

 

お墓は、死者のためだけにあるのではない。

 

今日を生きる、私たちのためにある。

 

今日を、もう少し大切に生きるために。

 

明日を、もう少し優しく生きるために。

 

そして、受け取った命を、次の世代へ渡していくために。

 

お墓。

 

それは、今日を笑顔にするもの。

 

明日を、元気にしてくれるもの。

 

そして、命のバトンを、未来へつなぐ場所。

 

 

おかえりなさい。

 

季節の変わり目。

 

朝夕に、少しずつ涼しさが混じりはじめる頃です。

 

大切な人を想う時間が、あなたにとって、穏やかな実りとなりますように。

 


 

命は、誰かの身体では終わらない。

 

誰かの生き方の中で、受け継がれていく。

 

 

命のバトンを未来へつなぐ伴走者

射場石利石材株式会社

 六代目当主 射場一之

 

 

 

【基本情報】
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◇ 大阪府知事許可(般-4) 第87663号
◇ 労働大臣認定 1級技能士石加 第84号
◇ 経済産業省公認 石匠位認定 第89001号
◇ お墓ディレクター1級 05-100101-04
◇ 建築石材アドバイザー 222034
◇ 相続診断士 20333425
◇ 終活ガイド 00005872

 

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