
2026.08.19
「どうせ枯れる花」に、なぜ人は水を切るのか。シリーズ「お墓は、命のバトン」

新聞の俳壇に、こんな一句がありました。
水切りし供花を墓前に雲の峰
たった十七音なのに、その情景が、すっと立ち上がってきます。
墓前に供えられた花。
その向こうには、夏の空。
大きくそびえる、入道雲。
そして、その花には、水切りが施されている。
花の茎を切り戻す。
しかも、ただ切るのではない。
少しでも水を吸いやすいように、ひと手間をかける。
でも――
花は、いつか枯れます。
わかっている。
それなのに、人は水を切る。
なぜだろう。
ここに、私は「祈り」の正体があるように思います。
祈りとは、結果が残ると信じることではない。
結果が残らないと知りながら、それでも手を動かすこと。
なのかもしれません。
誰かに褒められるわけでもない。
写真に撮って、SNSに載せるわけでもない。
「こんなに丁寧に供養しています」と、誰かに評価してもらうわけでもない。
墓石を磨く。
ただ、花を切る。
水を替える。
そして、手を合わせる。
それだけです。
考えてみれば、私たちの人生には、そんな「一手間」がたくさんあります。
誰も見ていないのに、最後まで丁寧に仕事をする。
誰にも気づかれなくても、約束を守る。
もう誰からも評価されなくても、先人から受け継いだ習慣を守る。
「そこまでしなくてもいいでしょう」
そう言われることもある。
たしかに、効率だけで考えれば、無駄なのかもしれません。
でも。
人生には、効率だけでは測れないものがある。
ここで、ひとつ大切なことがあります。
この一句は、私自身が墓前で見た光景ではありません。
新聞の俳壇にあった一句です。
だからこそ、この一句をきっかけに、私は想像しました。
なぜ、この人は「水切り」をしたのだろう。
誰かに見せるためではない。
花が永遠に咲き続けるわけでもない。
それでも、花を少しでも長く、美しく保とうとした。
その「一手間」に、人間の深いところが表れているように感じたのです。
無駄だとわかっていることに、どう向き合うか。
そこに、その人の生き方が出ます。
お墓参りも、そうです。
墓石を磨く。
草を抜く。
花を供える。
香を焚く。
手を合わせる。
それらを、「死んだ人のための作業」と考えれば、どこかで合理化したくなるかもしれません。
でも、お墓参りは、単なる作業ではない。
その場所で、自分が何を大切にしてきたのかを思い出す。
自分は、誰から何を受け継いできたのかを思い出す。
そして、自分は次に何を渡していくのかを考える。
その時間なのではないでしょうか。
だから、水切りという一手間は、花だけのためではない。
死者だけのためでもない。
自分自身が、どんな人間でありたいのか。
それを、身体に思い出させるための一手間なのだと思います。
誰も見ていない。
誰も褒めてくれない。
それでも、丁寧にする。
その姿勢は、やがて誰かに受け継がれていきます。
子どもが見ているかもしれない。
孫が見ているかもしれない。
あるいは、直接その姿を見ていなくても、その人から受け取った価値観が、誰かの人生の中で生き続けるかもしれない。
命は、身体だけで受け継がれるのではありません。
生き方によって、受け継がれていく。
「人に見られていなくても、手を抜かない」
「誰も評価しなくても、大切なものを大切にする」
「結果が残らなくても、やるべきことをやる」
そんな姿勢が、次の誰かの中に残っていく。
それもまた、命のバトンなのだと思います。
雲の峰は、やがて消えます。
供えた花も、やがて枯れます。
墓前に置いたものは、永遠には残りません。
けれど――
そのとき、そこに込めた「一手間」は、もしかすると残ります。
誰かの記憶に。
誰かの習慣に。
誰かの生き方に。
そして、まだ見ぬ未来に。
だから私は思うのです。
残るものだけが、価値のあるものではない。
消えてしまうと知っていても、大切にできること。
誰にも見られていなくても、手を抜かないこと。
それこそが、人から人へ渡っていくものなのかもしれません。
「どうせ枯れる」
そう思った瞬間に、水切りをやめることもできる。
でも、
「どうせ枯れる。それでも。」
そう言って、もう一度、花の茎に刃を入れる。
その「それでも」に、人間の尊さがある。
そして、その「それでも」が、次の世代へ渡っていく。
お墓は、命が終わった場所ではない。
命のバトンを、次へ渡す場所なのです。
お墓。
それは、今日を笑顔にするもの。
明日を、もう少し元気にしてくれるもの。
おかえりなさい。
雲の峰がそびえる夏の空の下。
誰にも見られていない一手間が、いつか誰かの心に、静かな涼を届けますように。
命は、誰かの身体では終わらない。
誰かの生き方の中で、受け継がれていく。

命のバトンを未来へつなぐ伴走者
射場石利石材株式会社
六代目当主 射場一之
【基本情報】
所 在 地:大阪府茨木市新和町16番19号
電話番号:0120-148183
営業時間:8:00~18:00
定 休 日:年末年始のみ
メ ー ル:info@iba.co.jp
L I N E :https://line.me/R/ti/p/@582fiyxj
【資 格】
◇ 大阪府知事許可(般-4) 第87663号
◇ 労働大臣認定 1級技能士石加 第84号
◇ 経済産業省公認 石匠位認定 第89001号
◇ お墓ディレクター1級 05-100101-04
◇ 建築石材アドバイザー 222034
◇ 相続診断士 20333425
◇ 終活ガイド 00005872
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