
2026.08.16
お墓はなくなった。それでも、人は帰ってくる。シリーズ「お墓は、命のバトン」(1left)

※本稿は、新聞に掲載された俳句を題材に、筆者の視点で再構成したものです。筆者自身の体験ではありません。
お墓を仕舞う。
その言葉を聞くと、「終わり」を想像します。
手続きをする。
墓石を撤去する。
そして、長くそこにあった場所を離れる。
これで、何かが終わってしまうような気がする。
けれど。
新聞に、こんな一句が載っていました。
墓仕舞いせし人も来て盆踊
墓仕舞いをした人も、盆踊りに来ている。
この一句を読んだとき、ふと、思いました。
お墓がなくなっても、人は帰ってくる。
太鼓が鳴る。
浴衣の袖が揺れる。
人の笑い声が重なる。
輪の中に、墓仕舞いをした人もいる。
もう、その土地にはかつての墓石はありません。
けれど、その人は盆踊りの輪にいる。
なぜでしょう。
お墓を仕舞ったからといって、先祖を仕舞ったわけではないからです。
墓石を手放すことと、受け継いできたものを手放すことは、同じではありません。
むしろお墓仕舞いとは、「これから、何を受け継いでいくのか」を考える機会なのかもしれません。
私たちは、つい「形」がなくなると、「中身」までなくなったと思ってしまいます。
家がなくなれば、家族もなくなる、ような気がする。
写真がなくなれば、思い出もなくなる、ような気がする。
お墓がなくなれば、先祖とのつながりもなくなる。
本当に、そうでしょうか。
命は、石の中だけにあるのでしょうか。
違います。
命は、誰かの身体だけに宿るものでもありません。
その人が残した言葉。
誰かを大切にした姿。
家族に伝えた生き方。
苦しいときに踏ん張った背中。
そして、その姿を見て育った誰かが、また次の誰かに渡していくもの。
命は、生き方の中で受け継がれていく。
だから、お墓は「過去を閉じ込める場所」ではありません。
むしろ、未来へ命を渡すための場所なのです。
墓石があることで、人は立ち止まる。
手を合わせる。
思い出す。
そしてまた、日常へ戻っていく。
お墓には、「帰ってくる」という感覚があります。
だから私たちが石に託しているのは、供養ではありません。
「ここに帰ってきていい」という感覚なのです。
もちろん、時代が変われば、お墓との付き合い方も変わります。
家族のかたちも変わる。
暮らす場所も変わる。
だから、受け継ぎ方が変わることは、大切にしなくなったことではありません。
受け継ぐ方法が、変わっただけ。
お墓じまいも、その一つなのだと思います。
大切なのは、石を残すことだけではありません。
その家族にとって、これからも無理なく、心を寄せ続けられる形を見つけること。
それが、本当の意味で「受け継ぐ」ということなのではないでしょうか。
そして、あの一句に戻ります。
墓仕舞いせし人も来て盆踊
墓を仕舞った人も、輪の中にいる。
太鼓が鳴っている。
人が笑っている。
その人は、何かを失った人としてではなく、いまを生きる人として、そこにいる。
そして、その輪の中には、見えない誰かもいる。
昔ここにいた人。
その人を覚えている人。
その人から何かを受け取った人。
その人から受け取ったものを、また誰かへ渡していく人。
そう考えると、盆踊りの輪は不思議です。
人が円になって踊っているだけなのに、命のバトンが、静かに手渡されているように見えてくる。
お墓は、命が終わったシンボルではありません。
今日を生きる人が、明日へ進むためのものです。
だから私は、石を扱う仕事をしながら、石だけを見ていたくないのです。
その石の向こうにある、家族の時間を見つめたい。
その家族が、これからどんなふうに生きていくのか。
何を残し、何を手放し、何を次の世代へ渡していくのか。
そこまで一緒に考えられる仕事でありたいと思っています。
いつか、お墓を仕舞う日が来るかもしれません。
そのとき、手放すのは「石」かもしれません。
けれど、命まで手放す必要はないのです。
名前が残らなくてもいい。
お墓がなくなってもいい。
その人から受け取ったものが、誰かの生き方の中に残っているなら。
命は、そこで終わってはいない。
誰かの生き方の中で、次の誰かへ渡っていく。
それが、命のバトンなのだと思います。
今夜、盆踊りの太鼓が聞こえたら。
ほんの少しだけ、耳を澄ませてみてください。
輪の中に、あなたが受け取った命と、あなたから渡っていく命が、きっといる。
お墓。
それは、今日を笑顔にするもの。
明日を、少し元気にしてくれるもの。
そして、命のバトンを、未来へつなぐもの。
おかえりなさい。
今年も、誰かが誰かの輪の中へ、帰ってきますように。
命は、誰かの身体では終わらない。
誰かの生き方の中で、受け継がれていく。
お墓は、命のバトン。

命のバトンを未来へつなぐ伴走者
射場石利石材株式会社
六代目当主 射場一之
【基本情報】
所 在 地:大阪府茨木市新和町16番19号
電話番号:0120-148183
営業時間:8:00~18:00
定 休 日:年末年始のみ
メ ー ル:info@iba.co.jp
L I N E :https://line.me/R/ti/p/@582fiyxj
【資 格】
◇ 大阪府知事許可(般-4) 第87663号
◇ 労働大臣認定 1級技能士石加 第84号
◇ 経済産業省公認 石匠位認定 第89001号
◇ お墓ディレクター1級 05-100101-04
◇ 建築石材アドバイザー 222034
◇ 相続診断士 20333425
◇ 終活ガイド 00005872
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